イースタン建築設計事務所 中村安奈氏 神野太陽氏 2

丸い窓がそういう効果を出していると。

「そうだと思います。窓には採光や通風の機能面もあるけど、面白さもあるんですよ。 その窓の持つ面白さを、いかに引き出すかを私たちは建築のなかで追求しています。船舶丸窓はそのひとつの答えですね。」

『水庵』（大阪・梅田の創作串揚げ店）さんでも、その答えとしての船舶丸窓を？

「梅田の路地にあって小さいけど高級な串揚げ屋さんで、外部に対して閉じたいんだけどお客さんの気も引きたい。 また、お店の入り口が道行く人からわかりづらい箇所にあるので、その導線として丸窓をつけました。 その効果は高くて、のぞき窓のような存在になっています。 歩いていると目に留まるから、『何だろう？』ってのぞくと、そこには串揚げのカウンターがあるって設計。 窓の面白さ、丸い窓の効果を引き出していると思います。」

では、最近竣工した『宝塚の家』について教えてください。

「斜面地なので、建物の半分を地下に埋めて半分を表に迫りだした設計になっています。 お施主さんは靴のデザイナーをされている方で、その仕事のイメージから近未来的な空間をつくりました。 迫り出した部分が仕事をするオフィスで、壁面が本棚。船舶丸窓は本棚の通風用に採用しました。」

デザイン的な意図は何かございますか？

「外観も建物内も曲線的なデザインで構成してるんですね。 直線は床などの水平なラインと、棚板くらいしかない。 そうすると縦のラインというのは出したくないので、窓もやはり丸い窓だろうと。」

話を少し戻しますが、窓の持つ面白さについてもう少し詳しく教えていただけますか？

「たとえば、小さい窓だと外が大きく見える。 外の木を大きい窓から見るより、小さい窓から見る方がインパクトがあるんです。 窓枠という額に景色が入っているのと一緒で、ぐっと人を引き寄せる効果があります。 『オブジェと建築の違いは、建築には中がある』というある建築家の言葉がありますが、 中があるということは、私たちの考えでは窓があるからなんですね。 だから中を面白くするためには、必然的に窓の役割が大きくなるんです。」